3シリーズクーペから独立
4シリーズは、F32型として、F30世代からクーペモデルだけ3シリーズから独立する形でデビューしました。
型式のネーミングは、これまでのE90(3セダン)、E92(3クーペ)のように連続していますから、限りなく3シリーズです。
スタイルとしては、2+2のクーペ。大人4人が快適に乗ることが出来る実用的なクーペです。
今回試乗したのは、前期(厳密には2017年からが後期ですが)の通常ラインの最高グレード、435i Mスポーツです。
435iの概要
BMW435iは、3L直6ターボのエンジンを搭載するモデルです。トランスミッションはトルクコンバータ式の8速AT。E90のLCIに搭載されている物と同じです。(E90前期はツインターボ)
306馬力の出力で、トルクは40.8kgmです。1200~5000rpmで最大トルクを発生するトルクフルな味付けで、最近のドイツ車らしい仕様と言えそうです。
定員は4人。実際に乗ってみましたが、頭のスペースに余裕があるとは言えないものの、不快に感じる程の狭さではありません。席替えしながらであれば揉めることなく旅行も出来そうです(笑)
トルコンATなので、街乗り向きということが分かります。M4とはそのあたりが違いますね。
4シリーズのスタイリング
フロントの迫力は中々の物で、Mスポーツ専用エアロは某L〇X〇〇やH〇ND〇のような見た目だけのおもちゃパーツではありません。フォグランプの横のスリットは貫通しており、タイヤハウス内に繋がっています。
おそらく、負圧によるダウンフォースの獲得と、ブレーキ冷却の2つの役割があるものと思われます。
見ての通り、若干ボンネットが高くなっていまして、これがE90の世代との大きな違いだと私は感じました。E90だとボンネットは運転席から見ても低かったです。一方で4シリーズは盛り上がっています。
衝突安全性などを考慮したデザインなのでしょう。もしかしたら、この形状が静粛性にも貢献しているかもしれません。
リアは左右2本出しのマフラーが目を引きます。回転数に応じてバルブが開閉する仕組みなので左が汚れやすいです。
リアはそんなに厳つくないですね。余裕を感じるデザインです。サイズのわりには大きく見えます。
BMW435i Mスポーツの乗り心地
サスペンションは、スポーツ+でなければ割と柔らかいです。ちょっと拍子抜けするくらいのやわらかさでした。
しなやかと評価することも出来るとは思いますが、私は少し違うように感じたので、以下に詳しく解説していきます。
ハンドリング
Mスポーツ専用ハンドルは太目で非常に握りやすいです。ステッチなどは、M系(M4やM5)と少し違います。
ハンドリングは、ややぼやけています。
リニアとは言えないと思います。日本車に乗り慣れている人にとってはもしかしたら十分リニアかもしれませんが、M5やポルシェを普段から運転している私にとってはゆるゆるな感じ。
低速域での操作が楽で、街乗りや渋滞時にストレスになりにくいです。
高速域では、またフィーリングが変わり(もしかしたら速度によってパワステのセッティング違うかも)、ややしっかりします。
ただ、決してリニアというかは、ゲームみたいな感じです。
ハンドルが前輪と隔別していて、どこか遠くでタイヤが操作されている感覚になります。
ペダル類
アクセル、ブレーキのポジションは普通で、ブレーキペダルはオートマ車らしく大きいです。Mとの違いですね。
アクセルレスポンスは、やや遊びがあるものの敏感に反応してくれます。踏み始め以外はピクピク動きます。
そして435i Mスポーツで一番良かったのがブレーキ。
まぁドイツ車のブレーキそのものなんですが、かなり効きます。こちらもほんの少し踏み始めの遊びがありますが、そこからは“じわじわとしっかり”効くといった仕上がり。
シート
やや大きいもののホールド感はしっかりしています。
着座位置が低くスポーティな雰囲気抜群です。それでも、窓の高さやピラーの角度、太さなどのお陰で視認性は高いです。
BMW435iの実用性
トランクスペースは、必要十分。特に広くはないですが、BMWなのでトランクスルーが出来ます。2人で乗るなら、結構な尺の物でも積めます。
誰がこの情報を必要としているかは不明ですが、一応、寝れます(笑)
居住性はサイズのわりには高いかなと感じます。幅が180cmちょいなので、都内でも駐車場に困らないサイズ感。それでいて4人が普通に座れますから、使い勝手は良いです。
ただ、立体駐車場はギリギリ入らなかったので、個々の駐車場のサイズにご注意ください。あくまで平置き前提です。
モード切替
エコproからスポーツ+まで選ぶことが出来ます。
エコproは、アクセルを離すとニュートラルと同じ回転数になって、踏んでもラグがあるような乗り味になります。コースティング機能ですね。
スポーツ+は足回りやアクセルのレスポンスが良くなります。
箱根ターンパイクを走りましたが、坂道もグイグイストレスなく登っていき、コーナーでも地を這うような挙動を見せます。
音も変わっている気がしましたが、よくわかりません。エコproとはかなり違います。
燃費
街乗りで10㎞/L弱、高速で12km/Lくらい走りました。カタログとさほど変わらないです。ただ、これはエコproの時なので、スポーツ以上で楽しく走っているとこれの7割くらいになります。
ハイオクなので、燃料費は安くないとは思います。頑張れば燃費よく走ることも出来る、程度に思ってください。
駆け抜ける喜びはあるのか
BMWも今や多くの車種を抱えるメーカーとなりました。
それでも直6を作り続けていることや、長寿モデルを受け継いでいることなど、芯となる部分は変わっていないはずです。
さて、この初代の4シリーズに駆け抜ける喜びを感じることは出来たのか。
答えは当然、感じることは出来ます。
ただし、Mの下位互換ではないということをお忘れなく。やはりSエンジンとはコンセプトが違います。車内に入ってくるエンジン音、手や足に感じるインフォメーションは決してピュアとは言えません。
あくまで高いレベルの“スポーティ”。スポーツではありません。
主戦場はサーキットや峠道ではなく街乗りや高速道路。ご自身が最も重視するシチュエーションに合った車なのか、今一度考えてから検討してみてください。
スピード感はM系に比べると希薄で、何キロ出しているか感覚的に分かりにくいです。気づいたら150km/h出ていることもざらです。ちょっとそこは慣れが必要でしょう。
エンジン音もかなり静かですし、しっかり消音されているのでスピードを出していても難なく会話が出来てしまいます。あまりBMWらしくは無いと思ってしまいました。
まとめ
実用性と燃費、スタイリング、価格のバランスを考えたらかなり優秀だと思います。
どれが特に優れているかと言われると解答にこまるのですが、やはり良さはバランスでしょう。
中古で300万円くらいがねらい目でしょう。税金は3Lクラス、保険もべらぼうに高い車種ではありません。維持費もそこまでかからないというのも魅力。
故障に関しては、個体差もあって分からない部分が多いですが、OEMパーツや中古パーツも出始めているので安く抑えようと思えば可能です。
スタイリッシュな生活にスタイリッシュなクーペ、理想じゃないですか?