一世を風靡したデザイン
アウディTTというと、街中でも比較的良く見るコンパクトなクーペ。ジャンルとしてはスポーツカーというよりは、”パーソナルカー”というイメージ。
丸みを帯びたルーフラインが非常に特徴的で、全体的に丸を基調としたかわいらしいデザインです。女性受けが良いかは分かりませんが、TTは女性が乗っていたらすてきだなと思う車の一つです。
今回の試乗インプレッションは最初期のTT8N型の1.8Tクワトロです。このグレードはTTが国内で販売開始されたときに輸入されたモデルで、左ハンドルの6速マニュアルのみというスパルタンな仕様です。
アウディTT 1.8Tクワトロのスペック
排気量 | 1.8L |
重量 | 1450㎏ |
馬力 | 225ps |
自動車税 | 45400円 |
1.8Lにして225馬力&トルク28というのは結構ハイチューン。乗り味にも影響しているのでこの辺りは後述します。それでも、排気量が小さい分燃費のカタログ値は10.8km/Lと古いわりに優秀な数字です。ヨーロッパ車はだいたいカタログ値の8掛けくらいが実燃費なので街乗りで8km/L前後と予想できます。
全長 | 4041mm |
全幅 | 1764mm |
全高 | 1346mm |
ホイールベース | 2428mm |
サイズは、見た目のわりに大きいかなと感じました。幅が1.8mを切っているので立体駐車場にも止められます。都内の狭い道でも止まらないサイズ感ですね。
TT1.8Tクワトロの外装デザイン
ボディラインで特徴的なのが、個人的に3か所あると思います。
- フロント
- ルーフ
- リア
フロントは、今のアウディにもつながるグリル形状を採用した本当に初期のモデルと言えるでしょう。
ルーフはとにかく丸いです。現行モデルでもここまで丸みは無いので初期型のアイコニックな部分ですね。
リアは初期型と2代目がライト形状等似ていると私は思いますが、ボディラインは初期のTT8Nの方がグラマラスです。”プリケツ”という言葉がぴったりで、現行はボテ尻という感じが否めません。
TT1.8Tクワトロの内装デザイン
インパネデザイン
私が気に入っているのは内装です。いまだに価格が安くない理由はこの古臭さを感じさせない内装なのではないでしょうか。
外装同様、円を基調としたパーツが多く採用されていて、シンプルにかっこよいと思います。それでいて、高級感というよりは”質実剛健”でたくましいイメージを持たせる外装とのギャップがおしゃれです。
ボタンの数は最低限に抑えるためにスイッチを引いたり押したり回したりして作動させるギミックが搭載されています。スイッチ類のデザインはこの時代のフォルクスワーゲンと類似する部分も多々あるものの、オリジナリティも出ていますね。
シート
フロントのシートはランバーサポートが割と大きめのホールド感のあるシートです。レザーとアルカンターラ(スウェード?)のコンビ仕様。擦れやすいところをレザーにしつつ、滑らないように座面をアルカンターラにするというのはポルシェなどにも見られる特徴ですね。
後席は無いものと考えた方が良いかなと思います。身長173cmの私が座ったところ、足のスペースはわずかにあるものの、頭がリアガラスにぶつかります。身長が150cm程度の女性や子供は座れるかもしれません。
収納
後席を倒さなくてもこのくらいのスペースはあります。ゴルフバッグは入りません。クワトロは四駆なのでアクスルが入る分トランクスペースは底上げされています。FFのモデルはもっと深いので積載能力は高いです。
シートを倒せばこれだけのスペースが確保できます。ゴルフバッグが余裕で2つ入るので2人2バッグでのゴルフには使えそうです。フラットになるので使いやすいです。
タイヤサイズ
私が試乗したTT1.8Tクワトロは純正の6スポーク17インチのホイールが付いていました。サイズは225/45/R17です。四駆なので全て同じサイズ。
デザインは似ていますが、5スポークの16インチのものを付けている個体も多いです。
試乗インプレッション
ハンドリング
ハンドルはそこまで重くはありません。自然な操作感で、スムーズな取り回し。
フロントにエンジンが積まれていますが、オーバーハングが小さいのとエンジンが小さいのが多少影響していそうです。
同年代のBMWと比べるとだいぶハンドルは軽いかなと思います。
シフトフィール
マニュアルの運転経験が教習所だけなのでこれは不明です(笑)
コリコリサクサク入るので意味もなくシフトチェンジしたくなるくらいには気持ち良いです。ストロークは普通で、5速と6速が若干遠いのか入れにくい感じがします。
2速→3速のシフト操作が吸い込まれるようで楽しいです。シフトミスするのは大概5速→6速で、4速に入ってしまいますがこれは私のドラテクの問題だと考えられます。
1速がすぐ吹き上がるので上り坂でなければ2速発進が良いでしょう。
ペダル類
まず、ペダルはデザインがかっこいいですね。
アクセルペダルは割と軽いです。吊り下げ式なので個人的にはマニュアルの始動時の細かい操作はしやすいかなと思いました。オルガン式だと踏み続けるには便利なんですがオンオフが急な気がするんですよね。
ブレーキはドイツ車らしい「踏んだ分だけ止まる」やつです。初めて乗った時から違和感なく使えました。日本車に慣れている人だと少し遊びが少なく感じるかもしれません。
最後にクラッチペダルです。クラッチは、深くまで踏めますがシフトが動かせるのはそこから少し手前。半クラの位置も結構浅めで簡単に繋がります。
音
1.8Lですが、ノーマルマフラーでも比較的迫力のあるサウンドです。
マフラーの音も聞こえますが、エンジン音やタービンの音もかなり聞こえてきます。特にタービンの過給圧が抜ける音は2000rpmを超えてアクセルを抜くとプシュンプシュン言います。チューニングカーみたいな演出です。
TT1.8Tクワトロの楽しさ
まず一番良いところは、サイズ感。左ハンドルであるものの特段気にならないので、楽しいです。
225馬力というパワーと、1.4t強の車重が速度を選ばない乗りやすさに繋がっていると思いました。パッケージングの上手さですね。小さい車は高速道路で不安になることも有りますが、むしろビュンビュン走るので速度注意です。
マニュアル車としては、1速でガクガクするような動きが本当に止まる寸前まで出ないのでとても扱いやすいと思います。クラッチがそこまで重くないので狭い道や都内の信号が多い道でも気負うことなく運転出来ます。
排気量が大きい訳ではないので、高速でしっとり運転するという感じではありませんからそういった乗り味を求めるのであれば3.2Lのモデルや6シリーズのような優雅なサイズ感のクーペが良いでしょう。
TT1.8Tクワトロの燃費
カタログ値では10.8km/lという悪くない数値です。他社で言うと、初代BMWミニのクーパーS(1.6Lスーパーチャージャー)と大体同じです。
四駆であることを考えたら悪くない数値でしょう。YouTubeで調べた感じ、オーナー談では頑張ればセクション燃費で15km/lも狙えるという人もいました。実際、高速を全く使わずに横浜市内を日常的に使った際の燃費は8.7km/Lでした。荷物満載で乗ったり、4人乗りで100㎞ドライブしたことを考えると予想より低燃費でした。もちろん、国産車ユーザーにはなんのことやらという感じでしょうが。
マニュアルなので、ドライバーによってかなり変わるとは思いますがマルチファンクションパネルの残り航続距離表示がドライブ中に平気で80㎞前後することがあるので注意した方が良いと思います。
TT1.8Tクワトロの高速での燃費はかなり良いです。下り坂でニュートラルに入れて転がしてあげれば15㎞/lは確かに現実的。トルクがあるので低速でもストレスなく運転出来ると思います。
同じTT1.8Tでも、クワトロでないモデルは馬力が低い上に、二駆(FF)なのでさらに燃費は良くなると思います。
これまで10台以上ヨーロッパ車を運転してきた経験上、高速での燃費はカタログ値に限りなく近い値が出ます。マニュアルだったら尚更かなと思うので、古い車ですがTT1.8Tクワトロの燃費は決して悪くないと思います。
総評
アウディTTは、外車に乗ってる嫌らしい感じもありませんし、かわいらしいのでウケも悪くないでしょう。初代が一番奇抜なデザインだとは思いますが、パッケージング的にも最もスポーティだと思います。
現行や1つ前のTTは、TTSやTT RSがあるので全体的に大人しめな仕上がりという印象。予算100万円くらいで、燃費も悪くなく運転が楽しめる車を探している人は是非検討してみてください。